2007年05月31日


今日は久しぶりに歯医者に行く。
治療箇所は左上の犬歯。現在この歯には神経はない。ちょうど挿し歯と同じようになっている。神経をとった穴の詰め物がとれてしまったので、それを詰めに歯医者に行ったのだ。

実はこの犬歯がこんなになったのには、こんな悲しい理由がある。


大学を卒業した私は、オランダで1年間農業研修をした。
オランダでの研修先はパプリカ農家。毎日のようにパプリカを収穫していた。

研修開始から半年ほどたったある日のこと。朝起きると左上の犬歯が痛い。
初めは「そのうち治るだろう」と思ってそのままにしていたが、その痛みは日に日に大きくなり、1週間もたたないうちに、物を噛むごとに激痛が走るようになった。
どうやら虫歯らしい。渡航前に「歯の管理だけはしっかりしとけ!」と研修生の先輩に嫌というほど聞かされていたが、まさか自分がなるとは思わなかった。

あまりにも痛いので、農場主兼、ホストファミリーのパパに「歯が痛い」と言うと「すぐに歯医者行ってこい」という。

早速、農場主の奥さんと子供二人と一緒に歯医者に行く。

閑静な住宅街の中に歯医者があった。外から見る限り普通の家と変わらないつくりに、一抹の不安を覚えた。

待合室に入る。4畳半ぐらいの小さな部屋。奥が治療室になっているようだ。
日本の歯医者の待合室と比べると、ものすごくこじんまりとした部屋だった。

幸いすぐに順番が回ってきた。一人で奥の治療室へと進む。

治療室に入ると誰もいない。ざっと部屋を見回してみる。窓がない部屋のど真ん中に、日本でも見るような診察台が1つ置いてある。診察台の周りには機材が一式揃っている。壁は灰色。天井には電灯が円形についていて、なぜか天井に近い壁にモニターが取り付けられている。

その部屋を一言でたとえるなら、


ショッカーの改造手術部屋



部屋に圧倒されていると後ろから声をかけられた。
振り向くとアジア系の中年男女が白衣を着て立っていた。



やべぇ、俺、改造される


直感でそう感じた。

そんなことを思われているとは夢にも思っていない中年男女はにこやかに近づいてきた。
この中年男女はどうやら夫婦らしい。旦那さんに診察台に乗るよう促される。
不安で胸いっぱいで逃げ出したかったが、「ここは歯医者だ」と自分に言い聞かし診察台に座った。
奥さんは待合室で待っている農場主の奥さんと何か話しているようだ。
しばらくすると農場主の奥さんが子供たちをつれ、部屋の中に入ってきた。

ちょっとホッとした。
まさかこのショッカー歯医者も子どもたちの前じゃ無茶しないだろう。気分が落ち付き、ある意味覚悟ができた。
だが、俺の考えは甘かった。


早速、子供たちが見守る中、治療が始まった。

どうやら歯医者の免許を持っているのは、奥さんショッカーの方らしい。で、旦那ショッカーは助手。

俺に口を開けさせ、問題の左上の犬歯をチェック。そして麻酔なしで歯を削り始めた。
噛むだけで痛む歯に容赦なくドリルが突き刺さる。

激痛が頭の中を駆け巡る。

でも、心配そうに覗き込む子供たちがいる手前、叫ぶことさえできない。
ある意味子供たちが麻酔薬である。

必死で、痛みに耐える俺をよそに治療は進む。
しばらくして奥さんショッカーが手を休めると、旦那ショッカー何かリモコンを持ってきた。どうやら壁のモニターの電源をいれるらしい。

俺は「はは?ん。あのモニターに治療箇所を映して、治療状況を説明してくれるんだな。ショッカーといえども患者への説明をしっかりするなんて、意外とだな。」と感動した。

しかしその感動は、一瞬で破壊された。

モニターに映し出されたのは、


コメディーホームドラマ


農場主の奥さんがよく見ているあれだ!
なんだよ!あれ普通のテレビかよ!
俺の感動を返せ(泣)!

治療が再開される。

農場主の奥さん、テレビ見て「HAHAHA!」
旦那ショッカーもテレビ見て「HAHAHA!」

おい、旦那ショッカー!おめえは治療に集中しろよ(怒)
テレビの電源入れてから、人の『のどちんこ』何度もバキュームで吸いやがって!ものすげえ苦しいんだぞ!

しかも、奥さんショッカー、俺が苦しんでせき込んだ拍子に、ちょっと削り過ぎたか?って感じで舌打ちするのやめてくれ。気になって仕方ねーよ!

ついでに子供たち!「痛い?痛い?」って何度も聞くな!痛いに決まってるだろ、麻酔なしで「神経」まで削られてるっぽいんだから!しかも、おまえらが歯医者に悪いイメージを持たないように気を使って、「痛くない。痛くない。」ってものすごく引きつった顔で言ってる俺の気持も考えて、ちょっと黙っててくれ!(泣)


治療が終わった。
俺の犬歯も終わった。

結局、途中で麻酔を打っていないことに気づいた奥さんショッカーは神経を抜く直前に麻酔を打った。麻酔が完全に効く前に神経を抜かれた俺は、今まで味わったことのない痛みを経験した。

しかも、治療費は保険がかからないため、70ユーロ(当時の金額にして8,400円)。一週間分の給料が一瞬にしてパーとなった。


精神的にも肉体的にも経済的にも苦痛を味わった俺は、もう二度とオランダの歯医者にはかからないと心の中で決めた。


諸君、オランダのショッカー歯医者の手術は想像を絶する。オランダには覚悟して行くように。

後日談だが、帰国後また左上の犬歯が痛くなったので、歯医者に行った。どうやら、神経が抜ききってなかったらしく、それが歯の奥で腐って痛みが出たらしい。


すげえよ、奥さんショッカー。


手術失敗した揚句に、時限式の爆弾を残すなんてなかなかできることじゃねーよ。(怒)


今回の教訓。
農業人も歯が命



at 18:11│コメント(0)オランダ回想録 │

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