2007年03月

2007年03月31日

『総合的生物多様性管理』(Integrated Biodiversity Management:IBM)

私はこの言葉をある一冊の本に出会い初めて知った。
その本とは『「ただの虫」を無視しない農業?生物多様性管理? (桐谷圭治 著 築地書店)』である。農業に携わる人にはぜひ読んでほしい一冊だ。

この本の内容は・・・とにかく読んで頂きたい。文才がない自分にとって、下手に書くとわかりにくくなる恐れがあるので詳しくはかけない。が、私が学んだのは、天敵や害虫だけでなく、その周りの生物や環境にも目をむけることの大切さを教えてくれた。

この本に出会ってから、畑で見つけた生物をよく観察するようになった。
また、見つけた畑の様子や他にどんな生物がいるのかも注意してみるようになった。これによって作物だけでなく、畑全体を把握できるようになってきた。

畑全体を見ることによって、害虫発生の有無が確認できるし、早期の防除が出来るようになり、結果化学農薬を半分以下、作物によっては化学農薬を使わなくても作ることが出来るようになった。
この本によって「化学農薬は本来必要ない」と強く感じることができたと思う。


さてここまで、自分でこれだけ「化学農薬は必要ない」と言い切っていて、恥ずかしい話だが、私は化学農薬を使う場面がある。
なぜかというと、自分の生活があるからだ。
「ここで化学農薬を使うと、後の化学農薬の必要がなくなるし、収量もあがる。つまりそれだけ収入がある。」となればやはり使ってしまう。
自分の理想と家族の生活を天秤にかけると、どうしても家族の生活をとってしまうのは、自分の弱さか?はたまた家族の生活を守る責任感なのか?
まあ、んなかっこいいこと言ったって、化学農薬を使っているのは事実だ。

少しづづ、少しづづ、化学農薬を使わないようにもって行きたいと思っている。


明日から新年度が始まるので、このシリーズはここで一区切りつけようと思います。




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2007年03月29日


最近はハウスを利用している野菜産地(特にトマト)には天敵や有用生物の導入が徐々に進んできている。
とは言うものの、ハウストマトの受粉作業はホルモン処理が主流だ。
露地ならば、野生の昆虫が勝手に受粉してくれるが、ハウスのトマトは密閉された空間では人が受粉作業をしなければ実がならない。
人の手でやるには時間がかかり面倒。そこで主流になっているのがホルモン剤を散布する方法である。このホルモン剤、温度によって散布濃度が違い、散布する回数も多いから面倒くさい。さらに、ちょっと濃度を間違えれば、トマトが奇形になってしまったりする。
そこで作業性や品質向上のために「セイヨウマルハナバチ」というハチを利用した方法が広がっている。これなら、ホルモン処理にかかる時間はなくなり、奇形が減り品質も向上する。
そんな矢先、お上から、「セイヨウオオマルハナバチ」に「使用待った」がかかった。
外来生物であるセイヨウオオマルハナバチが野生化し、日本の生態系に悪影響があるかもしれない。だから、もし使うなら逃走防止を徹底してくれということだ。
確かにその通り。では、セイヨウオオマルハナバチに変わる生物がいるかというと、なかなかいない。こうなると、せっかくマルハナバチを利用して、作業性や品質が向上したのに、仕方なく「ホルモン処理」に変える生産者も出てくる。

この事例で日本に生物農薬が浸透していないのがわかる。
つまり、生物農薬は海外からの輸入に依存しているために、国内の野生生物の生物農薬への利用が進んでいないのである。

これから生物農薬をビジネスにしようと考えている人がいるならば、100%日本の野生生物で生物農薬を商品化してもらいたい。さらに言わせてもらえば、九州なら九州の、北海道なら北海道の野生生物を各地方限定で商品化・販売してもらいたい。
これならば、生態系への影響がほとんど問題にならないはずだ。
そうなればハウスだけの利用ではなく、露地でも利用できる生物農薬となる。
日本にあった生物農薬の開発を切に願う。

少し前までは『IPM』(総合的有害生物管理)が盛んに言われていたが、これはハウスという限られた「箱庭」でしか通用しない。
日本の農地のほとんどは露地であるから、露地で通用する生物農薬を主流にしていかなければならない。出来ることなら各地域、各畑にいる生物を利用・・・というかそこにいる生物に手伝ってもらって、害虫からの被害を防除していくというに様に変えていかなければならないと思う。
つまり、これからは『IBM(Integrated Biodiversity Management)』(総合的生物多様性管理)の時代に移り変わっていくと思うし、そうなっていかなきゃと想う。

<その9に続く>




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2007年03月28日

久しぶりの更新です。

さて、今回はオランダの化学農薬に対する考え方を述べようと思う。

私は2002年3月から翌2003年3月までの13ヶ月間、オランダで農業研修をしていた。
オランダの農業を一言で言えば「合理的」であろうか。とにかく何をやるにしても合理的な物の考え方をする。

私の研修先はオランダの首都アムステルダムから南に電車で2時間ほど行ったところ。ベルギーとの国境が近いローゼンダール近郊のパプリカ農家だった。
研修先に初めて行ってまず衝撃を受けたのはそのでかさ。
天井が高いオランダ式のガラス温室が1.7ha。もちろん連棟で、真ん中にある通路で100m走が余裕で出来るほどの広さだった。熱源は温水パイプを通路ごとにレールのように敷き、その上を従業員が乗った電動の滑車が動いてパプリカを収穫していた。栽培方法はロックウール栽培で、潅水や温室内の温度調整はパソコンで全て操作できるようになっていた。パプリカ農家というより、パプリカ生産工場と言った方が良いかもしれない。

そんな農場で害虫防除に使われていたのが「生物農薬」であった。
生物農薬とは、害虫を捕食したり、寄生したり、感染したり・・・要するに害虫にとっての天敵を利用した生きた農薬(?)である。
(身近な例を挙げれば、テントウムシはアブラムシを食べるので、アブラムシの天敵はテントウムシということになる。)
天敵を利用した害虫防除は、オランダの温室栽培農家であれば8割以上が利用していると農場主がいっていた。
なぜオランダでは天敵を利用した害虫防除が主流になっているのか?
それは「合理的」であるオランダ人の考えに合っているからである。

農場主に「何で天敵を利用しているの?化学農薬は使わないの?」と聞いたら次のような答えが返ってきた。

「昔は化学農薬が主流だったんだが、今はほとんど使わない。なぜかって?だって化学農薬を使うと収穫できない期間が出来るだろ。それじゃあ収穫が追いつかないよ。それに化学農薬は害虫が発生するたびに何回も使わなきゃいけないだろ?そんなの労働時間の無駄だし、体に悪いだろ。
 その点、天敵を利用した防除だったら楽だよ。毎日収穫できるし、防除に時間を割かなくていいんだ。だって天敵なら人間と違って24時間働いてくれるだから。化学農薬を使わないから人間にはもちろん、パプリカにも天敵にも安心・安全。良いことばっかだろ?」

なるほど。実に「合理的」な考えだ。
ただそこで気になったのはコストの問題。
私は「生物農薬は値段が高い」というイメージを持っていた。実際、日本では化学農薬の何倍も値段がかかる。そのことが気になって農場主に聞いてみたら次のような答えが返ってきた。

「コスト?そりゃかかるけど、年間トータルで考えたら化学農薬を使った場合とあんまり変わらないな。・・・え、日本は生物農薬がそんなに高いのか?オランダの生物農薬は自国で生産しているからそんなにかからないよ。それに生物農薬の会社、うちは『コパート社』の生物農薬を使っているが、サービスが充実しているんだ。コパート社は顧客に対して生物農薬のアドバイザーを派遣してくれるんだ。生物農薬を使用し始めた初めは1ヵ月は1週間に1回、パプリカの生長にあわせて2週間に1回程度アドバイザーが来て、天敵生物の様子をチェックしてアドバイスをしてくれたり、こちらの質問に答えてくれる。だから生物農薬の使い方を失敗することがない。これだけのサービスも含めて化学農薬とコストが変わらなかったら、当然天敵防除を選択するだろう?」

この答えを聞いて俺は、「合理的でなくても天敵防除を選択するだろうな」と思った。
また、日本で生物農薬の普及が、なぜ遅れているかがわかった気がする。

日本で生物農薬が遅れている理由は「コスト」と「使用者の情報不足」によるものだと思う。
オランダのコパート社はその両方をクリヤしているから、これだけオランダの農家に支持されているのだ。

日本では残念ながら「コスト」と「情報提供サービス」の二つをクリアしている企業はなかなかないように思える。もし生物農薬をビジネスにするのであれば「コパート社」を見習ってほしい。農家が必要としているのは「物」だけでない。「情報」も必要なのだ。

<その8に続く>


at 05:19│コメント(0)食の安全を考えよう! │

2007年03月12日

農作物に害虫がつくと、植物の元気がなくなる。栄養を吸い取ったり、光合成に必要な葉を食べられたりするからだ。
そこで「植物を守るため」、というか、「人にとって価値ある植物を守るため」に農薬が使われる。

化学農薬は作業面だけでみれば、あれほど楽な害虫対策はない。化学農薬を水に溶かして霧吹きなんかでシュシュとするだけで、人間にとって憎らしい害虫をやっつけられるからだ。
戦後から化学農薬が普及したのは「作業が楽」ということが非常に大きい。

だが、人間にとっての害虫がこのままでいるわけがない。自分たちを守るための対応をしたのだ。それは「薬品に対する抵抗性」である。
つまり、害虫を殺す有効成分に対して強くなる、または全く効かなくなることだ。これは「進化」と言ってもいいかもしれない。

何年か前、ある農家が化学農薬を使って害虫をやっつけていた。しかしだんだん農薬が効かなくなってきた気がした。散布ムラがあると思いさらに同じ化学農薬を使っていた。その後、その農薬が全く効かない害虫がでてきて、その作物を半分枯らしてしまった。

実はこの農家、就農したての私である。
当時、ハウスでパプリカ(カラーピーマン)を栽培していた。化学農薬の使用に関しては薬品のラベルを見て、その通りにやっていた。
ただ問題は、使用した化学農薬の商品名が違っても、有効成分が同じだったことだった。
今から考えると、自分は相当無知であった。
同じ有効成分を使うことにより、害虫(ここではアブラムシ)に抵抗性がついてしまうことを知らなかったからだ。
これを機に化学農薬の使用には十分注意するようになった。

最近これと同じようなことがトマト農家に起きて問題になっている。
トマトにとっては致命的な病気「黄化葉巻病(感染するとトマトがある程度大きくなってから、一気に葉が黄色くなり枯れてしまう。)」のウイルスを媒介する「シルバーリーフコナジラミ」という害虫が、度重なる農薬の散布によって「抵抗性」を持ってしまったのだ。
この「シルバーリーフコナジラミ」の中でも抵抗性をもっているタイプは特に「バイオQタイプ」と呼ばれてる。
現在「バイオQタイプ」に効く農薬はない。もっとも「バイオQタイプ」に効果がある農薬が開発されたとしても、同じように抵抗性がついてしまうと思うが・・・。
「バイオQタイプ」は九州のあるトマトの産地で発生し瞬く間に広がった。
初めは九州全域までだったが、地球温暖化の影響か、だんだんとその勢力を北上させ、ついに去年の末には関東全域で確認されるようになってきた。
それとともに、黄化葉巻病も広がっていきトマト生産者にとっては戦々恐々とする日々となっている。
ただ、これ以上広がらないようにするためには、いくつかの対策がある。
まず挙げられるのは、害虫をハウス内に侵入させないために、ハウスの側面や入り口に0.6ミリ以下の防虫ネットを張るという、物理的に防除する方法。
また、黄化葉巻病に抵抗性を持った品種の導入や、害虫の温床となるハウス周りの除草・残渣の処理などだ。ただこの対策はあくまでハウストマトの場合であり、雨よけ露地栽培や家庭菜園では抵抗品種ぐらいしか対策はない。(抵抗品種は病気を発病させないだけであって、ウイルスが入っても感染しているかわからないというデメリットがある。これによって逆にウイルスが広がるのではとの危惧する声もある。)

結局この問題は、化学農薬に頼り切った人間への自然からのしっぺ返しだろう。自然が害虫を介して人間に警告しているのだ。「あんまり図に乗ってんなよ」と。


さて、ここでこの問題の解決の糸口となるかはわからないが、ある農家(私)の後日談を述べよう。
アブラムシに抵抗性がつき、化学農薬での防除が出来なくなった私は、「いっそのこと、このままアブラムシはほっといて、どれだけパプリカが収穫できるか試してみよう。」と農薬の使用をあきらめ、ハウスのパプリカをそのままにした。
それから1週間、防除も何もしないでパプリカを収穫し続けた。アブラムシはますます増えハウス内はアブラムシだらけ。収穫に入った私の体中に無数のアブラムシがたかった。

2週間後。アブラムシの集まっているところ(「コロニー」と呼ばれる)で茶色のアブラムシがちらほら見え始める。初めは気にも留めなかったが徐々に増えているようだった。

3週間後。茶色のアブラムシが多く目に付くようになると同時に、ものすごく小さいハチの様な虫がアブラムシにたかっているのを見る。どこかで見覚えがあると思い、思い出してみる。あ、オランダでの研修中にみたアブラムシの天敵の「アブラバチ」だ。ということはこの茶色くなったアブラムシはマミー(アブラバチのさなぎ)か!

4週間後。ハウス内に「アブラバチ」が多く飛び回る。アブラムシの数は明らかに減る。茶色になったアブラムシには茶色いフワフワしたカビが生えはじめる。どうやらそのカビ(菌)は生きたアブラムシにも感染するようだ。これも天敵なのかも知れない。

5週間後。アブラムシは全滅とはいかないが、その数をかなり減らした。
アブラムシが減ると共にアブラバチの数も減ったような気がする。
完全に枯れたパプリカ以外は、樹勢を取り戻しつつあり、収量も上がってきたように思えた。葉の裏には元気なアブラムシよりも、茶色いカビに着かれ動かなくなったアブラムシが多くなっていた。

6週間後。ハウスの中には色々な虫が多くなってきた。害虫、天敵、その他の生物。また、ハウス内に生えた雑草にはアブラムシが多くいたが、パプリカが枯れることはもうなくなっていた。

7週間後。収穫を終了。農薬をやめてから、毎日収穫できたから収量も予想以上に上がった。

これは当時の俺にとっては、大きな失敗であると同時に、大きな発見だった。
この翌年からパプリカにかける農薬の回数が劇的に減ったのは言うまでもない。


化学農薬は確かに便利だ。しかし使えば使うほど、それだけ自然からのしっぺ返しがくるのだろう。自然の理は良く出来ている。

日本ではまだまだ化学農薬に頼っているところがある。
しかし、私が1年間研修に行ったオランダでは、天敵が確固たる地位を築き、化学農薬はもはや過去のものとなりつつある。
次はオランダの化学農薬に対する考え方を述べよう。

<その7に続く>


at 06:37│コメント(0)食の安全を考えよう! │

2007年03月09日

1999年。国は消費者からの要望に応え、JAS法を改正した。
そして改正JAS法に基づいて、有機農産物と有機農産物加工食品のJAS規格を決めた。
このJAS法で示された規則を守って生産され、かつ農林水産大臣に登録された登録認定機関の認定を受けたものだけが、「有機JASマーク」を付け、「有機」や「オーガニック」といった表示をつけることが許された。

この「有機JASマーク」を認定される最低条件は、
?農薬や化学肥料は原則として使用しないこと
?種まきまたは植え付けの時点からさかのぼり、2年以上(多年生作物の場合、最初の収穫前3年以上)禁止されている農薬や化学肥料を使用していない水田や畑で栽培されていること
?有機農作物の生産者は、生産から出荷までの生産工程管理・格付数量などの記録を作成していること
?遺伝子組み換え技術を使用していない
などが挙げられる。

さらに、「有機JASマーク」は、農林水産大臣に登録された登録認定機関の認定を受けなければならない。
認定には、煩雑な書類審査と実地検査が行われる。また、登録認定機関は、認定を受けた農家がその後も有機JAS規格に基づいた生産を行っていることを、最低1年に1回は調査することになっている。さらに、その登録認定機関が適正な業務運営を行っているかについても、毎年1回、独立行政法人の農林水産消費技術センターというところが監査を行うことになっている。

改正JAS法の施行により、有機農産物に対して明確な基準が示されたので、有機農産物は人々から選ばれるようになっていった。
しかし、「無農薬」や「減農薬」などの表示に対しては何も規制はなく、改正JAS法施行の後もそのような表示で流通していた。
なぜなら「無農薬」や「減農薬」の表示に関しては、法律に基づいた明確な基準もなく、有機野菜のような検査機関もなかったからだ。

「これでは改正JAS法の意味が半減してしまう。」
こう考えた国は次の一手打った。「特別栽培農産物ガイドライン」の施行である。
2004年4月1日から施行されたこのガイドラインは、「消費者にとってわかりにくい表現はしてはいけない」とした。
つまり、「無農薬」や「減農薬」などの表現を禁止としたのだ。
今現在では、化学合成農薬と化学肥料を共に一定(通常の5割)以上減らして栽培された農産物は、どれも「特別栽培農産物」と呼ぶようになっているが、この表示にも県などの認定を受けなくてはいけないことになっている。
また、「有機農産物」や「特別栽培農産物」を取り組むきっかけとして、「エコファーマー」という認定も登場してきた。

「有機JAS法」や「特別農産物ガイドライン」によって「安心・安全」という面では消費者にといってわかりやすい環境になってきたといえる。
ただ注意しなければならない面もある。「有機農産物はどれも無農薬だ」と信じる消費者も少なくないだろうが、必ずしもそうではない。
確かに、農薬や化学肥料は原則として使用しないこととされているのだが、「通常の有機農産物に用いる防除方法だけでは有害動植物を効果的に防除できないなど、やむを得ない場合に限り、有機農産物の国際基準に基づいた約30種類の農薬の使用は認められている」からだ。だから必ずしも「有機=無農薬」ではない。もっとも、この農薬には害虫の天敵の「生物農薬」や人の食品にもなる「デンプン水和剤」など安全性が高いものが多い。しかし菌の繁殖を防ぐ「硫黄くん煙剤」などは、うーん化学農薬ともいえないことはない気もするが・・・。
「有機」の基準がはっきりしたのはよかったが、消費者の考える「有機農産物」とはちょっと違うものになっているのかもしれない。

また、有機農産物の流通量が増えない理由として、認定機関に支払う検査料が結構かかるということがある。実際、俺もこれが「有機JAS認定」をとらない大きな理由だ。しかも、認定機関によっても、検査費用はピンキリ。
2007年2月7日の時点で、有機農産物、有機加工食品、有機飼料及び有機畜産物を認定できる機関は59機関(国内52機関、外国7機関)。
この機関はそれぞれの活動範囲も違えば、JAS認定にかかる費用も大きく異なる。
例えば、Aという認定機関は「1ha当たり年間10万円だけ払ってもらえれば、農産物は何を作ってもJAS認定します。」という。しかしBという認定機関は「どんな面積でも年間10万円支払えば有機JASマークつけて良いですよ。ただし、その土地で生産した農産物で、有機JASマークをつけて販売した農産物の収入の内、2割を認定費用として支払ってください」ってなところもある。
もしも有機JASマークの認定を受けようとしているなら、認定機関選びは慎重に決めたほうがいい。

正直、俺が管理している農地で有機JASマークがとれるところがいくつかある。
しかし、JAS認定を受けようという気がなかなか湧いてこない。
これは、認定費用が高いとか、煩雑な書類審査や実地検査が面倒ということのほかに、俺自身が「有機JAS マーク」について魅力を感じないことが大ききな要因だと考える。
なぜか?だってメリットがあんまり見えないから。確かに有機JASの認定が受けられれば販路も広がるだろうとは思うのだけど、それに見合った利益が上げられるのだろうか?だいたい利益がほしくて有機JASの認定を受けるのもどうかと思うし・・・。
自分の目指している農業にとって有機JASの認定が必要かと聞かれたら、べつにあっても良いけど、なくてもかまわないかなと思ってしまう。

最近は生産履歴をつけていないと、スーパーなんかには出荷できなくなってきている。生産履歴には当然、使った農薬の倍率や散布面積、化学肥料の使用量などを記入しなきゃいけない。正直これが面倒くさい。朝から晩まで畑で仕事して、夜は生産履歴みたいな事務仕事をしなきゃならない。
使った農薬や化学肥料は自分の生産履歴帳にかいて、そこから出荷先用の用紙に書き写す。これがかなりめんどくさい。
そして俺は思いついた。「農薬や化学肥料を使わなければ、事務仕事が楽になるはず!」と。
こうすると不思議なことに、自然と作ったものが有機農産物になっていく。有機JASマークはついていないけどね。

いま、自分の出荷物には「無農薬」や「無化学肥料」なんて売り文句はつけない。有機JAS認定を受けてないし、つけなくてもお客さんは味で感じてくれる。
有機JAS法も俺にとっちゃ必要ないのかもなー。なんて考えちゃった。
連載<その1>で、「化学農薬が必要ない」といったのはこの辺にある。

ここまで話が毎回脱線しているが、まあ適当に付き合ってください。
ここまでは思想的な「化学農薬はいらない。」だったが、次は生物科学的な「化学農薬はいらない。」と話を進めて行きたいと思います。

<その6に続く>



at 21:51│コメント(0)食の安全を考えよう! │