農想記

2012年03月31日

消費税の増税、閣議決定ですか。

消費税上げる前にやるべきことはたくさんあるのにね。


さて、消費税が上がると仮定して、危惧していることが。
それが消費税増税分の原価価格への転嫁。

1989年に導入された消費税。始めは3%。それが1997年に5%に引き上げ。
消費税が導入された1989年~2003年までは、店頭表示価格は原価だけだったのだが、2004年に価格表示の『税込表示』が義務化された。

税込価格表示が義務化された2004年当時、俺はスーパーの地元野菜の産直を始めて一年を経過したばかりだった。

当時税込表示の義務化直前、俺はスーパーの青果担当者と価格について頭を悩ませていた。

それまで、税抜き価格で『99円市』と銘打ってセールを時々行っていたのだが、税込表示が義務化になった場合、税込み価格の『103円市』にするのか、それとも『99円市』のままでいくか、それを考えていた。

つまり、それまでは『99円市』と銘打っても実際お客様が支払うのは103円だったわけなのだが、『99円市』と銘打ったままの場合、お客様が支払われるのはそのまま99円。つまり差額分の「4円」分の原価低下につながる。つまりはうちら生産者の収入が減るというわけ。


で、結局どうなったかと言えば、税込み価格で『99円市』で行くことに。


当時は『デフレ戦国時代』と言われるくらい小売業者が「安さ」にこだわってだし、お客様も低価格嗜好が非常に強いご時世だったし、なにより『103円市』という何とも中途半端なセールになるからさ。
(それに野菜は工業製品と違って、日々価格が変化するからそのままダイレクトに税込分を転嫁表示できなくなってたんさ。)


で、つまり、差額の4円分は生産者の収入減になったわけである。

さて、ここで話を戻します。

今回閣議決定されたのは、消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%に上げるというもの。

現在5%の消費税。これが8%に引き上げられる時、10%に引き上げられた時、表示価格はどのように変化するのか?

俺が思うに、結局は「見た目の表示価格」にこだわって、いくら消費税が上がっても『99円市』は『99円市』のままな気がする。

つまりは、消費税の増加分は、巡り巡って、そのまま生産者の収入減につながると俺は思う(基本小売業は、負担を消費者に求めず、仕入先や生産者に求めるからね)。
だからこれまで以上のコスト削減は必須です。


現在消費税は総売上が1000万円以上の事業者に課せられている(逆を言えば総売上999万円以下なら消費税は課税されない)。

まあ、ぶっちゃけうちは消費税を納税しているわけだけど、多くの農家さんは1000万円のボーダーライン上にいるはず。

ここで農家の考えかたとして「ギリギリ999万円以下に抑えて経営しよう」と「1000万円超えたらガンガン稼ぐぞ!」の2通りに分かれる。

ちなみに俺は後者の考え方。
そして後者だけが次の世代にバトンを渡せるだけの体力を持ちうることができると思う。

農業は産業。自立した経営ってのは、国に納税して当り前の経営である。

ぶっちゃけ、今の政治のあり方には不満タラタラだけど、それでも俺は日本というこの国が好きだからさ。
自分がこの国を支えてるって胸張って言うために、自分の出来ることはしっかりやっていこうと思います。




A-GYO(エイギョウ)agyonoudennki at 07:27│コメント(3)トラックバック(0)

2012年02月23日

今トマトがブームで売り切れ続出。トマトジュースもかなり売れてるとか。

どうやら某TV番組で「トマトが健康にいい!」的なことが放送されたことが理由だそうな。

夏にトマト作ってる俺にとっては、「そういう報道は夏にやってくれよ!」ってな感じなのだが(腹黒発言w)

まあ、今までもTVがある特定の食品(「バナナ」とか「リンゴ」とか色々)の一過性ブームを作りだしてたから「またか」というのが正直な気持ち。

でもさ、俺、これは一概に『悪い』とは言い切れないと思うんさ。

それら報道された食品の効果の真偽はさておき、その食品への購買意欲を刺激することは時としてプラスに働く時があると思うんよ。


例えばさ、産地廃棄するぐれーキャベツが豊作になっちゃったときに、「キャベツは健康にいい!」的なTV報道がされれば、需要UPで産地廃棄しなくてもよくなるかもしれないじゃん。

やっぱさ、野菜を作ってる側としては、産地廃棄するよりは食べてほしいもん。


だからさ、物事タイミングだと思うんだよ。

でも実際は、TV報道する時って完全にタイミングずれてて、紹介する商品の価格が高い(供給量が少ない)時ばっか。
TVがもうちょいタイミングを見て報道してくれれば、作り手喜ぶ、売る側も喜ぶ、消費者も喜ぶ・・・みーんなハッピーになれるのになぁって思う。


まあ、それを意図的にやったらやったで色々問題にされるんだろうけどさ(汗)




A-GYO(エイギョウ)agyonoudennki at 07:03│コメント(2)トラックバック(0)

2012年01月07日

昨日、卸売市場から帰ってきた親父がなんとなくさびしそうな表情だった。

話を聞くと親父が30年近く出荷し続けてきた卸売市場が3月で閉場するという。

「時代が変わってきたんだなあ」

そう言った親父の後ろ姿に哀愁を感じた。


ここ数年で一気に卸売市場を取り巻く環境が変化してきた。

一昔前は、農家(生産者)は生産物を市場や農協出荷するしか販路はなかったが、今は生産者の販路が多様化し、選択の幅も広がった。
また、小売店なども生産者と直接取引が昔と比べれば多くなり、市場を通さない流通(市場外流通)が増えてきた。

そういう環境だから、卸売市場に顔をだす出荷者(農家)も買手(取引先)も段々減り続け、経営難で閉場する市場もポツポツ出てきてた。

だから、いつかこういう日が来るのはわかっていたけど、やはり一時代を築いた親父にとってはさびしいのだろう。

昨年末から今日までの短い期間に出荷用の段ボールの販売会社の廃業、卸売市場の閉場など
上原農園を取り巻く環境に大きな変化が起きている。


多分、一つの時代が区切りを迎える、そんな時期なのかもしれない。


でも一つの時代の終わりとは次の時代の始まりでもある。

これを一つの機会としてとらえていかなきゃいけない。

種はすでに色々播いてるし、発芽もしている。

これから、発芽した『それ』をどのように育てていくか。

それが俺の今年の課題だね。


A-GYO(エイギョウ)agyonoudennki at 06:49│コメント(2)トラックバック(0)

2011年11月21日

なりふり構わず包丁振り回してブロッコリーを狩ってた先週末。

その甲斐あって、なんとなくだが、ブロッコリー祭りのゴールが遠くの方にチラってみえた!!

多分、今週中には祭りは終了できそう♪
毎日霜が降りるようになると、ブロッコリーの品質も良くなくなるので、その前にケリをつけようと思います。


さて、話は変わるが、野菜全般的に市場価格が安値です。
これは11月が予想以上に暖かく、予定よりも早く野菜が成長、前倒し出荷となっているから。

思い出したんだけど、俺が市場に価格決定権がある市場出荷でなく、自分で価格決定できるスーパー出荷に切り替えるきっかけになった出来事があったのも、8年前の今の時期。

その年はブロッコリーの大豊作の年で、市場にはブロッコリーが溢れててさ。
収穫のピーク時に、いつも出してる地方市場だけじゃ置ききれなくて、たまに持っていっていた、ちょっと離れた大きめの市場にブロッコリー持って行ったんだ。
でもさ、市場の従業員にさ、「ああ!?ブロッコリー持ってきたの!?ブロッコリー溢れてんの見てわかんねーのかよ!?」とあからさまに嫌な顔されたんだ。

まあ、普段持ってきてない奴が、ここぞとばかりに溢れてるブロッコリー持ってきたら嫌な顔もするのも当り前なんだけど、でもそこは「お願いします!」と頭下げてさ。従業員に「ケッ!じゃああの隅に置いておけよ!」って言われて何とか30箱だけ置かせてもらってさ。

で、その日は帰ったんです。


当時、ブロッコリーを入れる段ボール箱は一枚60円で、その中にブロッコリーを大きさをそろえて5~8個入れたものを出荷してたんだ。

当時の平均的な市場価格はブロッコリー一箱500円前後が相場だったから、ブロッコリーが市場に溢れているとはいえ、一箱200円以上(30箱だから6000円以上)で売れるかなって思ってたんだ。

でもね、翌日電話で市場に問い合わせてうちのブロッコリーの価格を聞いて力が抜けたんだ。


その時の俺の出荷したブロッコリー一箱の取引価格は、






50円。




ブロッコリー入れるダンボール一箱60円なんですよ?

朝からブロッコリー収穫して、60円のダンボール箱にブロッコリーが5~8個入って、かつ、その市場までガソリン使って往復2時間かけて市場まで持っていったのに、


その日のその市場での売り上げは、



たった1500円。



・・・その時、俺は決めたんだ。


「自分で価格を決められる農業のやり方に変えよう」って。


それから、色々動いてさ。んで、今現在では自分で価格を決められるスーパー出荷がメインになってるというわけです。

卸売市場の必要性っては十分理解しているし、なくてはならないものだと思う。うちもいまだに、馴染みの市場には定期的に出荷してるし(まあ、ブロッコリーは出荷することないがw)。

でも、卸売市場だけに頼った農業経営では、もう都市近郊農業で生き残っていくことはできない時代なんさ。

農業経営ってのは画一的な答えがあるわけじゃない。
その地域にあった、自分にあった農業経営ってのがある。

それを早めに見つけることができれば、もっと農業って面白くなると思う。
そして、長く続けることができる。

『時代にあった農業経営をしろ』

これは今は亡き14代目の言葉。
その言葉を毎年野菜が安くなると思いだして、戒めとし、自分に問いかける。


「おい、お前。時代にあった農業経営してるか?」




A-GYO(エイギョウ)agyonoudennki at 06:54│コメント(4)トラックバック(0)

2011年10月22日

先日、来年ヨーロッパに農業研修に行く研修生たちにOBとして講話してきました。

んで、海外研修に行く前の4カ月間の過ごし方について話させてもらいました。


1、海外研修に行く前に海外研修後の理想の自分像を強くイメージ!

こうなりたい理想の自分像があって、その自分に近づくための海外研修であるべき。早い話が「海外に行くこと」が一番の目的になっちゃあダメよってこと。研修はあくまで目的を達成するための過程なんだから。



2、海外研修行く前にできるだけ多くの日本の農家さんのところへ行け!!

海外の農業知る前に日本の農業知れって話。栽培技術・経営技術はもちろん、物事の考え方や今の農業に対しての想いも知っておくべき。本や雑誌だけの知識だけで海外農業研修いくなんてナンセンス。
色々な知識と体験をもって自分自身を『研』いて『修』める。それが研修ってもんなのさ。




3、日記をつけよう!!

これは研修生云々ではなく、将来農業という職業につくならば必須。農業は知識やデータも重要。記しておけば過去の反省・検証ができるからね。
自分の今の想いなんか書いとけば、苦しい時に日記を読み返す事によって元気が出ます。
凹んだら周りの人が立ち直らせるんじゃなく、自分自身で立ち直らなきゃ。


・・・とまあ、こんな感じの話しをしてきました。


今年の研修生は全体的に「◎」♪。去年みたく、死んだ魚のような目ぇした奴は極々少数で大多数は目が生き生きしてた。俺のつたない話も真剣に聞いてくれたしね。「もう一叩き」すればさらにいい感じの『海外農業研修生』になるのかなと。


まあ、一回心を折っといた方がいい奴は何人かいたけど。
『心を折る』っても、悪い意味じゃなくて、この事前講習期間中に心を綺麗に折って綺麗にくっつけておけば、骨と一緒で心が回復した時、前よりも心が強くなるものだからさ。

つまり「一回心を折っといた方がいい」ってことは見込みがあるってこと、だからそれは、さらにいい研修生になるチャンスがあるって意味なのさ。

この事前講習期間中、自分の足りないところに気付いて心折れても、しっかり心をくっつければ強くなるもんなのさ。

事前講習ってそういう意味合いも含めてやるものだと俺は思う。だから研修生達には自分の為にも頑張ってほしい。これも『研修』よ♪


今週末、俺が尊敬してやまない同期のキノが講話に行くという。研修生には大チャンス♪是非キノの話を聞いて自分自身を成長させてくれい!頑張れ!研修生!!







追伸。

スタッフの方、色々ありがとうございました。私もこの講話に行けて良かったです。
それと、俺もこの講習に参加して自分自身の体力の衰えを確認できました。

なぜならば、先日の朝の運動のものであろう筋肉痛が、



翌日の『夕方』に来ました。


何なの?この微妙な時間差は・・・(汗)

・・・とりあえず、もしも来年も呼んでもらえるならば、研修生達の朝練を簡単にこなせるような体力作っときます。
打倒!細マッチョコンビ!!(笑)





A-GYO(エイギョウ)agyonoudennki at 07:08│コメント(0)トラックバック(0)