2007年03月09日

1999年。国は消費者からの要望に応え、JAS法を改正した。
そして改正JAS法に基づいて、有機農産物と有機農産物加工食品のJAS規格を決めた。
このJAS法で示された規則を守って生産され、かつ農林水産大臣に登録された登録認定機関の認定を受けたものだけが、「有機JASマーク」を付け、「有機」や「オーガニック」といった表示をつけることが許された。

この「有機JASマーク」を認定される最低条件は、
?農薬や化学肥料は原則として使用しないこと
?種まきまたは植え付けの時点からさかのぼり、2年以上(多年生作物の場合、最初の収穫前3年以上)禁止されている農薬や化学肥料を使用していない水田や畑で栽培されていること
?有機農作物の生産者は、生産から出荷までの生産工程管理・格付数量などの記録を作成していること
?遺伝子組み換え技術を使用していない
などが挙げられる。

さらに、「有機JASマーク」は、農林水産大臣に登録された登録認定機関の認定を受けなければならない。
認定には、煩雑な書類審査と実地検査が行われる。また、登録認定機関は、認定を受けた農家がその後も有機JAS規格に基づいた生産を行っていることを、最低1年に1回は調査することになっている。さらに、その登録認定機関が適正な業務運営を行っているかについても、毎年1回、独立行政法人の農林水産消費技術センターというところが監査を行うことになっている。

改正JAS法の施行により、有機農産物に対して明確な基準が示されたので、有機農産物は人々から選ばれるようになっていった。
しかし、「無農薬」や「減農薬」などの表示に対しては何も規制はなく、改正JAS法施行の後もそのような表示で流通していた。
なぜなら「無農薬」や「減農薬」の表示に関しては、法律に基づいた明確な基準もなく、有機野菜のような検査機関もなかったからだ。

「これでは改正JAS法の意味が半減してしまう。」
こう考えた国は次の一手打った。「特別栽培農産物ガイドライン」の施行である。
2004年4月1日から施行されたこのガイドラインは、「消費者にとってわかりにくい表現はしてはいけない」とした。
つまり、「無農薬」や「減農薬」などの表現を禁止としたのだ。
今現在では、化学合成農薬と化学肥料を共に一定(通常の5割)以上減らして栽培された農産物は、どれも「特別栽培農産物」と呼ぶようになっているが、この表示にも県などの認定を受けなくてはいけないことになっている。
また、「有機農産物」や「特別栽培農産物」を取り組むきっかけとして、「エコファーマー」という認定も登場してきた。

「有機JAS法」や「特別農産物ガイドライン」によって「安心・安全」という面では消費者にといってわかりやすい環境になってきたといえる。
ただ注意しなければならない面もある。「有機農産物はどれも無農薬だ」と信じる消費者も少なくないだろうが、必ずしもそうではない。
確かに、農薬や化学肥料は原則として使用しないこととされているのだが、「通常の有機農産物に用いる防除方法だけでは有害動植物を効果的に防除できないなど、やむを得ない場合に限り、有機農産物の国際基準に基づいた約30種類の農薬の使用は認められている」からだ。だから必ずしも「有機=無農薬」ではない。もっとも、この農薬には害虫の天敵の「生物農薬」や人の食品にもなる「デンプン水和剤」など安全性が高いものが多い。しかし菌の繁殖を防ぐ「硫黄くん煙剤」などは、うーん化学農薬ともいえないことはない気もするが・・・。
「有機」の基準がはっきりしたのはよかったが、消費者の考える「有機農産物」とはちょっと違うものになっているのかもしれない。

また、有機農産物の流通量が増えない理由として、認定機関に支払う検査料が結構かかるということがある。実際、俺もこれが「有機JAS認定」をとらない大きな理由だ。しかも、認定機関によっても、検査費用はピンキリ。
2007年2月7日の時点で、有機農産物、有機加工食品、有機飼料及び有機畜産物を認定できる機関は59機関(国内52機関、外国7機関)。
この機関はそれぞれの活動範囲も違えば、JAS認定にかかる費用も大きく異なる。
例えば、Aという認定機関は「1ha当たり年間10万円だけ払ってもらえれば、農産物は何を作ってもJAS認定します。」という。しかしBという認定機関は「どんな面積でも年間10万円支払えば有機JASマークつけて良いですよ。ただし、その土地で生産した農産物で、有機JASマークをつけて販売した農産物の収入の内、2割を認定費用として支払ってください」ってなところもある。
もしも有機JASマークの認定を受けようとしているなら、認定機関選びは慎重に決めたほうがいい。

正直、俺が管理している農地で有機JASマークがとれるところがいくつかある。
しかし、JAS認定を受けようという気がなかなか湧いてこない。
これは、認定費用が高いとか、煩雑な書類審査や実地検査が面倒ということのほかに、俺自身が「有機JAS マーク」について魅力を感じないことが大ききな要因だと考える。
なぜか?だってメリットがあんまり見えないから。確かに有機JASの認定が受けられれば販路も広がるだろうとは思うのだけど、それに見合った利益が上げられるのだろうか?だいたい利益がほしくて有機JASの認定を受けるのもどうかと思うし・・・。
自分の目指している農業にとって有機JASの認定が必要かと聞かれたら、べつにあっても良いけど、なくてもかまわないかなと思ってしまう。

最近は生産履歴をつけていないと、スーパーなんかには出荷できなくなってきている。生産履歴には当然、使った農薬の倍率や散布面積、化学肥料の使用量などを記入しなきゃいけない。正直これが面倒くさい。朝から晩まで畑で仕事して、夜は生産履歴みたいな事務仕事をしなきゃならない。
使った農薬や化学肥料は自分の生産履歴帳にかいて、そこから出荷先用の用紙に書き写す。これがかなりめんどくさい。
そして俺は思いついた。「農薬や化学肥料を使わなければ、事務仕事が楽になるはず!」と。
こうすると不思議なことに、自然と作ったものが有機農産物になっていく。有機JASマークはついていないけどね。

いま、自分の出荷物には「無農薬」や「無化学肥料」なんて売り文句はつけない。有機JAS認定を受けてないし、つけなくてもお客さんは味で感じてくれる。
有機JAS法も俺にとっちゃ必要ないのかもなー。なんて考えちゃった。
連載<その1>で、「化学農薬が必要ない」といったのはこの辺にある。

ここまで話が毎回脱線しているが、まあ適当に付き合ってください。
ここまでは思想的な「化学農薬はいらない。」だったが、次は生物科学的な「化学農薬はいらない。」と話を進めて行きたいと思います。

<その6に続く>



at 21:51│コメント(0)食の安全を考えよう! │

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